気候変動対策会議COP26会場のジャパンパビリオン(グラスゴー)でチャデモ協議会が気候変動緩和対策としてのV2G技術を紹介しました
先月10日、チャデモ協議会は、脱炭素化の鍵となる技術であり、気候変動による影響の緩和への貢献が期待される「V2G技術」について、グラスゴーで開催されたCOP26の会場から世界に向けて情報発信しました。
これは、11月2日から12日の気候変動サミットの期間中、会場のブルーゾーンに設営されたジャパンパビリオンで環境省が主催したセミナーシリーズの一環で、「CHAdeMO V2Gによる気候変動への挑戦」と題されたこのセミナーは、11月10日、COP26のTransport Dayにグラスゴーの会場から生中継されました。セミナーの目的は、脱炭素社会の実現や防災強化のために気候変動の影響緩和に向けたソリューションを模索している幅広い層の方々に情報を提供することで、具体的にはV2G (vehicle-to-grid*)の基本的なコンセプトや技術規格標準化の状況を説明し、実証試験の事例を紹介しながら、これまでに得られた知見を共有するという形を取りました。
セミナーの冒頭では、チャデモ協議会欧州事務所の山辺知子事務局長がチャデモの概要を説明し、続いて、柴田直孝同部長がチャデモ V2Gの仕組みや事例を紹介しました。続いて、この分野で最も取り組みが進んでいる英国から、政府の担当者、そして世界最大の住宅V2G事業「スキウルス」を運営した企業からの発表がありました。
英国政府のイノベーション機関であるイノベートUKを代表して登壇したのは、イノベーション(ゼロエミッション・インフラ)部長のジョージィ・ウォードル博士です。同氏は、英国政府が2018年来3,000万ポンドを投資した20の実証試験から得られた主要な知見を整理し、事業の結果ばかりでなく、V2G導入を加速するために乗り越えなければならない各種の障壁を説明しました。消費者、電気事業者、更にビジネス面からの障壁を特定し、特に消費者が理解を深められるような情報提供の重要性を強調しました。また、これからV2Gに取り組む政府関係者に対する提言として、エネルギー規制に焦点を当て、最適なユースケースから事業を開始すること、そして何より、最初から系統運用者を巻き込むべきだと述べました。
スキウルス事業を運営したエナジープラットフォームプロバイダのカルーザからは、フレクシビリティ担当のコナー・マー=マクウィリアムズ部長がオンラインで参加し、同事業の内容や結果を紹介しました。事業のライブデモでは、充放電の状況、利用可能なフレキシビリティの総和など、各種データが刻々と姿を変える様子が画面に表示されました。また、ユーザインターフェースを簡素化して使い勝手を最適化したことや、必要に応じて消費者がAIの設定を覆せることも紹介されました。 同氏によると、プラグイン率(EVが充放電器にプラグインする時刻および継続時間)が消費者が獲得する報酬を上げるために重要で、消費者の懸念であると思われていたEVバッテリの劣化については、当初の予想に反し、参加者から苦情が一件もなかったとのことでした。
技術規格の状況について柴田氏は、「チャデモの経験を振り返ると、最初の製品が発売されてから技術が安定するまでに4~5年かかるのが一般的で、他の技術を使ったV2Gは市場に出るまでに予想以上に時間がかかるのではないか」との懸念を表明する一方、「チャデモ協議会の会員企業はV2Gの領域におけるパイオニアとして、喜んで他規格の立ち上げに協力する」と述べて、他企業群との協力を提案しました。
セミナーのビデオは環境省のデータベースにアーカイブされており、こちらのリンクから視聴可能です。 https://www.youtube.com/watch?v=zb990banCSU
また、ジャパンパビリオンのセミナーシリーズのその他のビデオもここからご覧いただけます。 https://www.youtube.com/playlist?list=PL9Gx55DGS7x5TmgFgSolhKitrtHrwNsFC
*V2Gは地域によってはVGI (vehicle-grid-integration)とも呼ばれており、電気自動車(EV)のバッテリーを充電だけでなく放電できるようにする技術を指します。